過去、世界中で発生したマグニチュード8クラスの大地震の中で唯一震源域近傍で長周期地動の記録が得られている1923年関東地震の記録を再検討すると同時に、地震断層の不均質なすべりを考慮したシミュレーションを行い、関東地震の際の長周期強震動を明らかにした。さらに、関東地震の記録から明らかになった長周期強震動のピークが規模の小さな地震の記録に見られる長周期震動のピークと異なる点に注目し、その要因の解明を関東地震のみでなくロサンゼルスで予想される大地震も想定して試みた。本研究の成果の要点は以下の通りである。 1)1923年関東地震の際のユ-イング強震計の特異な記録状況を詳細に検討した結果、ユ-イング強震計の摩擦抵抗がこの地震時に大きかったと考えることにより、従来の相異なる推定地動の矛盾を解決した。 2)関東地震の際の東京での地震動は大きな長周期成分を含んでおり、速度応答スペクトルは周期13秒で120cm/secに達するものと考えられる。 3)数値シミュレーションによる推定地動は一定の断層面と地震モーメントを与えた場合でも非常に大きく変化する。特に、断層面上のすべり分布と破壊伝播の様式が推定地動に大きく影響する。また、表層に軟弱な堆積層があると地動は大きく増幅される。 4)関東地震の際の長周期強震動のピークは、東京で観測される規模の小さな地震の長周期地震動のピークと大きく異なるものである。 5)深さ数kmから10km程度の所に位置する断層がある場合この長周期の波が見られるが、その振幅は短周期成分に比べてかなり小さい。しかし、深さ数kmから10km程度の所に位置する断層が大きなすべりをし、且つ断層の破壊伝播が観測点に向かってくるときに、この長周期の波は大振幅を持つ。 6)上記の結論は、関東地震の場合のみならず、ロサンゼルスで予想される大地震の場合でもあてはまる。
|