研究概要 |
八ヶ岳および妙高火山群(飯綱・黒姫・妙高・焼山)における歴史時代の4ラハ-ル、地質時代の14岩屑なだれ堆積物の特性(層相・堆積様式・体積・発生源の特徴・時代)を詳しく明らかにして、これら火山における岩屑なだれの発生頻度を見積もった。これらのうち発生因については、水蒸気爆発・地震動・ドーム貫入の3つの可能性が考えられるが、地質時代の岩屑なだれの場合は、実証的証拠を見出すことがほとんど不可能であるので、さまざまな状況証拠から、水蒸気爆発が最も可能性が高い、と指摘した。 発生頻度については、これらの火山では、過去1万年内に限って見る限り、体積0.1km^3に達する巨大崩壊が5回発生している。したがって平均2千年に1回という値をえた。それらのうち最大規模のものは妙高火山の矢代川岩屑なだれ(0.5km^3、9000年前)である。妙高火山最後の岩屑なだれは、2,700年前(杉野沢岩屑なだれ、0.1km^3)に発生しており、したがってすでに平均発生年を大きく上回っていることを指摘した。なお、八ヶ岳最新の岩屑なだれは、大月川岩屑なだれ(888年6月20日、0.35k^<m3>)である。 ラハ-ル、とくに融雪や豪雨が誘発する二次ラハ-ルは、八ヶ岳、妙高火山群ともつねに警戒が必要である。 以上の結果は、火山形成史が詳しく解明されている火山体をモデルケースとした研究によって得られた結果であって、火山災害の防・減災指針や、火山地帯の環境評価にあたって、貴重な教訓となるものである。
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