研究概要 |
イオンビームを含むプラズマ(イオンビーム・プラズマ系という)中では,イオン音波の外に「速い」ビームモードと「遅い」ビームモードの三種類の波動が,適当な条件下では,存在可能であることが線形理論の範囲ではよく知られている。 本研究では,非線形的な範囲にもっていったとき,イオンビーム・プラズマ系内の三種類のモードの中のどのモードの波動の励起が可能か,また,可能だとしたらその性質はどうかを調べることに感心がある。我々は今年度の研究では,イオンビーム・プラズマ系が線形的には安定になる条件(イオンビームのエネルギーWbを10eV以上にする)下で,「遅い」ビームモードに属するソリトン状波動を励起することに成功した。ところで,この波動の振幅は,伝播と共にかなりの距離まで,増大し続けることがわかった。これは,系内のイオンビームによる増幅作用のために起こると考えられる。さらに,その波動の非線形分散関係をも測定した。この結果によると,ソリトン状波動の振幅が増すと速度は徐々に減少する。この測定は,Wb(〕 SY.simeq. 〔)10〜20eVのビーム・エネルギーの範囲でビーム速度を幾度も変えて行なっている。また,このようにして得られる速度の異なる二つの「遅い」ビームモード・ソリトン状波動を同時励起し,それらを互いに衝突させ,両者間で非線形的相互作用が起こっていることも観測した。上記の実験の結果は,現在,論文にまとめている最中である。 その外,イオンビーム・プラズマ系内で二つの異なるモードの非線形波動を同時励起することも試みているが,なかなか難しく,今後も続行して,成功させたい。
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