本年度は、合体により低ベータのスフェロマック配位が高ベータ(〜1)の逆転磁界配位(FRC)へ緩和する物理的機構の解明に進展があった。特に2個の逆方向トロイダル磁界(磁気ヘリシティー)を持つスフェロマックを合体させると、イオン温度(本予算にて計測を整備)が合体前の約10eVから約100eV(電源増力が最終状態の50%の1月現在)へ急増、これによりベータ値が急増してベータ値〜1のFRCへの平衡遷移が生じていることが判明した。このイオン温度の急増は合体に伴う磁気リコネクションの磁気・運動(熱)エネルギー変換作用によるものが大きいと考えられる。合体によりX点付近の中性電流層の異常抵抗成分が古典抵抗値の30倍へ急増すること、さらに直接X点周辺部でアルベーン速度の1/10〜1/3程度の粒子加速が発生していることが観測され、磁気リコネクションと平衡遷移との密接な関係が判明した。一方、逆方向トロイダル磁界を持つスフェロマック同士の合体では磁気エネルギーは2個の和、磁気ヘリシティーは2個の差となる。この性質を利用して磁気エネルギーを一定に保ちつつ磁気ヘリシティーのみを変化させる実験を行い、平衡遷移条件の検証を行った。その結果、合体プラズマは磁気ヘリシティーの総和がテーラー状態のそれの20%以下の時、トロイダル磁界零のFRCへ緩和すること、それ以上の時、有限トロイダル磁界を有するスフェロマックに緩和することが判明した。これは磁気エネルギーが磁気ヘリシティーに比べて極めて大きい領域において、テーラー理論の磁気ヘリシティー保存性が破られることを直接、実験的に検証したことになる。即ち、FRCの安定性を保証する安定領域がテーラー理論の磁気エネルギー極小領域に連続して存在することが明らかになった。
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