本年度は200eVに達する高温領域のプラズマ合体実験に成功し、磁気エネルギーから熱エネルギーへの変換気候を含めて低ベータ無力磁界配位から高ベータ逆転磁界配位への平衡遷移についてメカニズムの解明をほぼ完成できた。これは電源を約2倍に増力し、イオン温度、流速分布、磁界分布の多地点測定を充実したことによる。本研究提案に従い、互いに逆向きのトロイダル磁界を有するスフェロマック2個を合体させてFRCを生成すると、“く"の字型に引き延ばされた磁力線が粒子と共に運動し、トロイダル磁気エネルギーが解放されること、同時にプラズマイオンは最大15km/secまで加速、イオン温度も選択的に200eVまで急増して熱エネルギーへの変換が起こることが判明した。この加熱機構は磁気リコネクションに伴う中性電流の抵抗散逸ではなく、バルクのアウトフローによりイオン粘性が発熱を引き起したもので、加熱の効率は80%を超えることが判明した。また、平衡遷移の条件としては、合体プラズマの総磁気ヘリシティーと総磁気エネルギーの比がある値以下の時、ベータ値の上昇によってn=2MHDキンクモードの発生が抑制されて、その間に磁気エネルギーと熱エネルギーが釣り合った安定なFRC平衡が成立することが明らかになった。その比がある値以上の時は逆にn=2モードの成長がポロイダル磁束からトロイダル磁束への磁束変換(ダイナモ)現象が引き起こして、磁気リコネクションによって熱エネルギーは排出され、通常のテーラーの磁気エネルギー極小状態(無力磁界配位)に緩和することが判明した。また、本合体生成法に変流器コイルによる電流駆動を組み合わせた結果、1.5倍までの範囲のFRCの磁束増倍とさらなる加熱が達成できた。以上、FRC合体生成時における低ベータ無力磁界配位から高ベータFRCへの平衡遷移メカニズムとその遷移条件が明らかになった。また、本手法による効率80%を超えるイオンの急速加熱特性、さらに変流器コイルによる磁束増倍と加熱は、将来FRCを低速、高効率に生成し、追加熱するために有効であることが明らかになった。
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