研究概要 |
核融合装置対向壁のリチウム(Li)コーティングの基礎実験を行い、以下の研究成果が得られた。 1)Liコーティング法の確立 真空蒸着によるLi膜のコーティング法としてヒーターを用いたオ-ブン加熱による蒸着を試み、ヒーター電力により成膜速度を制御できることを示した。また不純物放出を抑制した蒸着法としてRF誘導加熱によるLiコーティングを試み、良好な結果を得た。 2)Liとガスとの化学反応 Liは化学的に活性であり、残留ガスのゲッタリング材と考えられる。そこでLi膜を真空容器内壁に蒸着した直後に、さまざまなガス(H_2,O_2,CH_4,CO)を真空装置内に導入しLiとの反応を調べた。LiはO_2ガスと強い反応性をしめし、強いゲッタ材となることが明らかとなった。 3)LiとH_2プラズマとの相互作用 真空蒸着によってLiを容器内壁にコーティングした後、H_2を用いたDCグロー放電を行い、LiのH_2プラズマとの相互作用を調べた。容器に蒸着されたLi量は水晶振動子膜厚計を用いてその場測定することにより求めた。また膜に吸収された水素量をH_2分圧の経時変化より測定した。その結果、数100nm程度の膜厚のLi膜は、容器にコーティングした全Li原子数に匹敵する水素を吸収することが示された。これは、水素がLi中において内部まで移動できることを示している。 4)実機におけるLiコーティング実験 核融合科学研究所との共同研究により、核融合科学研究所トカマク装置JIPPT-IIUにおいてLiコーティング実験をおこなった。トロイダル容器底部よりLiオ-ブンを導入し、RF誘導加熱によりオ-ブンを加熱してトロイダル容器面積の10%程度に0.5g程のLiを蒸着した。その結果、主放電時において酸素や炭素不純物を20-50%減少させること、およびNBI放電時においてリサイクリングの低減効果が見られる、などの良好な結果を得ることができた。
|