前年度において、岩石試料中の亀裂の分布の測定および、コンピュータによる再構成に関して、基本的技術を確立したのを受けて、今年度においては、それらの手法を実際の放射性廃棄物地層処分安全評価にどのように応用できるかについて、検討を加えた。 その結果、本計画開始当初、想定されていたように、廃棄物処分地点から十分離れ、処分場建設による環境の乱れのない岩盤における放射性核種の移行に対して、本手法を適用するよりも、むしろ、処分場近傍の岩盤に対して適用するほうがより効果的であり、安全評価上でもより有意義であることが判明した。 すなわち、(1)亀裂ネットワークを再構成し、そこにおける放射性核種移行を解析するためには、ある程度限定された領域における亀裂分布の情報が必要であるが、そのような情報を測定できる可能性のあるのは、処分場建設に伴い掘削される空洞とその周辺領域である。(2)最近の、人工バリアに対する詳細な性能評価の結果によれば、人工バリアを適切に設計することにより、人工バリアから漏出する放射性核種に対しても、高々数10メートルの岩盤を天然バリアとしてその周囲に見込んでおけば、十分低い毒性に低減することができる。(3)そして、そのような領域は、まさしく(1)で考えられたような人工バリア周辺の領域である。 本研究により得られた手法と上記のような知見に基づき、今後、亀裂ネットワークモデルを用いた詳細な人工バリア周辺領域の性能評価が望まれ、また、これにより、高レベル放射性廃棄物処分場の安全評価に大きな進歩をもたらすものと期待される。
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