実験装置の放電管部は内径約13cmのパイレックス管の中に納められていて、電極、キャピラリーは両電極側にある2つのフランジに支えられている。両電極本体は銅製で、その先端には中空のタンタル箔がついており、キャピラリーは石英製で外から放電状況を観察できる様になっている。フランジにはサンプリングの為のガス溜がついており、同位体分離の実験では放電管部とガス溜とで閉じた系にして一定時間放電後、ガス溜のガスを四重極質量分析器を用いてガスの組成分析を行った。今回の研究ではガスにネオンを用いて実験を行った。 放電はキャピラリー内にプラズマが充填されるように起こる。この放電に関して陰極の形状等に依存して陰極側で2つの放電形態が観察された。1つは電圧が約10V低く安定しない放電形態(Aモード)、もう1つは電圧が高く安定する放電形態(Bモード)である。Aモードでは陰極全体をプラズマが包みこむように放電し、Bモードでは陰極本体先端のタンタル箔が明るく輝く。陰極先端のタンタル箔に薄く短いものを選び、電流8A、圧力30Torr以上にするとAモードからBモードに移り、圧力等を変化させても安定してこの放電形態が持続される。今回の実験はAモードでは、長時間放電が持続されない為に全てBモードで行った。このBモードの電圧-電流の特性を圧力一定にして測定した結果、全ての圧力においてアーク特有の電圧-電流負特性が見られ、電流一定の条件において圧力40Torr近辺では両電極間の電圧が一番低くなり、また電流や圧力に依存せず、キャピラリー内部の電界強度はほぼ一定であることが分かった。 同位体分離の実験においてまず初めに分離平衡の到達時間を調べた結果、60〜80分で平衡に到達することが分かり、全ての同位体分離のための放電時間を80分で行った。今回の研究においてはキャピラリー長さ、電流、圧力の3つのパラメーターが分離効果に及ぼす影響を調べた。 まずは分離係数の圧力依存性を調べた結果、他のパラメーターに関係なく圧力が低いほど分離係数が大きくなることが分かった。次に電流依存性を調べた結果、電流が大きいほど分離係数は大きくなり、その関係は一次関数の形で表せることが分かった。最後にキャピラリーの長さの依存性を調べ、他のパラメーターに関係なくキャピラリー長さは長い方が分離係数は大きいことが分かった。
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