(1)画面に入射する散乱X線スペクトルの測定 半角45度の円錐型コリメータを検出器の前に置いて、ビーム軸上にビームストッパを置いて、この直径を少しずつ小さくして行ってスペクトル測定し、外挿法で散乱線スペクトルを求めた。次にストッパを取り除いて(一次線+散乱線)のスペクトルを測定した。両者の差は一次線スペクトルとなる。こうして、画像上の一点に入射する一次線と散乱線を分離出来た。 (2)X線管から発生するスペクトルの理論計算 X線管陽極に入射する電子エネルギーのばらつきを、モンテカルロ法で計算し、制動放射断面積の式を量子論の式を使って計算した。その結果、BirchとTuckerの論争を解決させた。次に、タングステン陽極から発生する特性X線について、新しいモデルを提唱した。 (3)画面に入射する散乱X線スペクトルの計算 モンテカルロ・シミュレーション法を用いて散乱線スペクトルを計算して、測定結果と良く一致する事を確かめた。散乱線除去用グリッドの効果もモンテカルロ法で計算した。グリッド比と照射野を変えて、Bucky factorとcontrast improvement factorを算出した。このデータから、画像のコントラストと被曝線量をバランスさせて最適なグリッドを選択する事が出来る。 (4)散乱線含有率・画像のコントラスト・被曝線量の関係 (1)、(3)の方法を用いて散乱線含有率を求め、含有率を変えてアルミニウムの周期的チャートのX線写真を撮影した。同じ濃度にするに要するmAs値と被曝線量が比例する事を使って、コントラストと被曝線量の関係を表す図(contrast-dose diagramと名付けた)を、種々の被写体と撮影条件について作成する事を提案した。この図は、散乱線含有率を調整して、必要最小限のコントラストを得て、被曝線量を出来るだけ減らせるような撮影条件を見出すためのものである。これは本研究の主題である。上記のチャートの写真の例を示して、この図の使い方を説明した。頭蓋骨ファントームを撮影し、トルコ鞍を観察する場合について、この方法を適用する例を示した。
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