研究概要 |
1.理論解析: 入力が未知ランダム信号である場合、自己回復移動平均(ARMA)モデルと適応ディジタルフィルタ(ADF)モデルには簡単な関係式が成り立ち、ADFによるシステム同定を行うことにより、原子炉の未臨界度の推定が行えることを理論的に確認した。 2.計算機シミュレーションによる解析: ADFの修正係数は、ラメータの収束速度と分散の観点から時系列データの分散の0.1%〜0.05%程度がパ最適で、推定されたモデルのスペクトルはFFT法で計算されたものと良い一致を示す。しかし、ADFは本質的に時系列の低周波成分に対し感度が高く、定常時系列においても低周波成分の処理の仕方でADFの結果に差が現れる。低周波成分を多く含む定常時系列では、ARMAモデル同定はパラメータの収束に多くのデータを必要とするがシステム同定結果はADFより優れている。 3.近畿大学原子炉実験データの解析: 未臨界度が変化する原子炉の中性子検出器信号揺らぎを高速・長時間ディジタル信号収集装置を用いて取得し、ADFによるARMAモデル同定を行い次のような結果を得た。ARMA(1,1)モデルでは、比較的少数のデータで推定パラメータは定常状態に落ち着き、パラメータの変化に対する応答も速い。一方、ARMA(2,2)モデルではパラメータの揺速はやや遅く、揺らぎも増加するが安定したパラメータ追跡能力を示す。未臨界度がドル単位で大きく変化する様な非定常では、ARMAモデル同定アルゴリズムと比較してパラメータの変動の追跡能力が非常に高い。しかし、数十セント程度の未臨界度変動の追跡では、統計的ばらつきが大きく、精度の点で逐次型のARMAモデル同的アルゴリズムより劣る。
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