研究概要 |
本研究は、低コストかつ高効率な太陽電池の実現を目指して,近年欧米を中心に盛んに研究開発が行われている化合物半導体である銅-インジウム-セレン(CIS)薄膜太陽電池に着目し,これに応用する半導体薄膜材料の基礎研究を行うことを目的としている。平成5年度は,主として太陽電池の中間層として用いる硫化カドミウム(CdS)ケミカルバス法による堆積について検討した。 原料液の組成,pH値および温度を変化させて硫化カドミウムおよび硫化亜鉛の薄膜を堆積し、X線回折、光透過率の測定を行った。また、CdZnS/Si接合を試作して電気的特性を測定した。その結果、以下の知見が得られた。 1.出発材料として酢酸塩を用いると、塩化物の場合に比べて堆積膜にムラができにくく、顕微鏡で観察した表面状態が良好な膜が得られることがわかった。 2.堆積時の溶液温度は80度程度、また、pHは8程度にした時、X線回折のピークが明瞭に現れる膜となったる。 3.3ないし5分間の堆積で膜厚はおよそ40nmになり、それ以上堆積時間を延長しても膜厚は増加しなかった。 4.CdS膜に比べてZnS膜の堆積は困難であった。種々の比率で両者を混合した溶液からの膜成長を試みたところ、膜中でのZnの比率を変化させることが可能であった。しかし、Znの膜中組成は最大で70%であった。 5.An/CdS/Si構造のC-V特性を測定し、I/C^2-Vプロットが直線的な変化を示すことを確かめた。 以上のように、本年度はCBD法による薄膜太陽電池用バッファ層の堆積について検討し、堆積に適した条件を見い出すなど有意義な結果が得られた。
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