1969年より数年おきに秋田県内で採取された食事試料を入手した。また、全国20ケ所よりの全血試料および秋田市において1972年より毎年採取された血清試料を入手した。血液、血清試料は感染の危険があるため、日本原子力研究所高崎研においてγ線照射による滅菌処理を行なった。滅菌した試料についてTの分析を進めている。また、全国より集めた血液試料には凝固防止のためのTCP液が含まれているため、血液バッグ製造3社の協力を仰ぎ、ブランク試料として各社よりTCP液の提供を受けた。まず、この全国血液試料についての分析が完了している。その結果、自由水T、有機型Tとも1Bq/L前後の値であったが、有機型Tの地域分布にははっきりとした緯度効果が認められた。即ち、緯度が上がるにつれて有機型T度も上昇した。 異常な値を示した横浜以外の19試料についての平均値とSDは自由水^3H(FWT)が1.4±0.4BqL^<-1>であり、OBTは1.0±0.4BqL-燃焼水^<-1>であった。OBT/FWTの比放射能比の平均値は0.80±0.28であり、1以下となった。OBT濃度と緯度の相関係数は0.826であり、p<0.01で統計学的に有意である。Momoshimaらは1986-87年に日本各地より採取した雨水についての分析を行ない、緯度効果を認めている彼らによれば緯度に対する^3H濃度の傾きは約0.077BqL^<-1>degree^<-1>であるが、今回のOBT濃度については0.10BqL^<-1>degree^<-1>と同様の値であった。FWTに緯度効果が認められなかった原因は不明である。人体中のFWTの生物学的半減期は10日前後とされており、最近、摂取した水分中の^3H濃度によって左右される割合が高いが、長い生物学的半減期を持つOBTの場合は長期間の摂取の平均値ともいえる値となることが考えられる。この意味では、長期の^3H暴露の指標として、OBTはFWTに比較して良い指標となると思われた。
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