本研究の目的は、環境から人体への^3Hの移行を解明することにある。^3Hは核融合炉の燃料として使われる核種であり、その安全性の研究は将来に渡って重要な課題と思われる。国際核融合実験炉であるITERにおいても^3Hが大量に使用されることが予定されており、このような大規模^3H使用施設においては一部の^3Hが環境中に漏洩することが予想されることから、環境中での^3Hの挙動、および環境から人体への移行過程の解明が急がれている。 ^3Hの移行を研究するためには、まず、^3Hの地域的分布と時間的分布を明らかにする必要があり、この点も含み、本研究では以下の様な成果が上げることができた。 1.^3Hの分布を明らかにするために全国20カ所から採取した血液試料を分析したところ^3H濃度に緯度の効果が認められた。 2.1979-1991年のもみ米を入手し、過去約12年間の経時変化を明らかにした。 3.秋田県内で採取され、冷凍保存されていた1969-1980年の血液試料、および食事試料を入手し、分析を進めた。 4.過去に報告されている有機結合型^3Hへの見かけの濃縮を説明するために簡単な環境モデルを作製していたが、この環境モデルと人体内代謝モデルを結合した。この際、人体内代謝モデルの正当化のために用いられている環境人体データの取り扱いに関する問題点を浮き彫りにした。
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