研究概要 |
実験試料としていくつかのメーカーによる炭素複合材(C/C)を選択し、電子顕微鏡観察のための試料薄膜化を試みると同時に高速中性子としてJOYOおよびJMTRによる原子炉照射を行った。すべての照射は終了していないが、一部の結果が得られているので試料作成法と共に概略説明する。 電子顕微鏡試料の作成は、ブロック状試料から低速回転カッターを用いて厚さ0.4mm程度に切り出し、3mm程度にする。これに外径3mm,内径2mm、厚さ0.01mmのリングを糊付けして片側を研磨する。試料が十分薄くなったところでさらに片側にもう一枚リングを付け、イオンミーリングにかけて中央に穴のあくまで研磨して最終試料する。研磨後電子顕微鏡観察をするが、何を観察するかによって作成条件が多少異なる。すなわち格子像の変化を見るか、回折像の変化を観察するかによる。格子像を観察する場合はかなり薄く均一にしなければならず、最終研磨条件がきわめて難しくまだ十分な像は得られていない。回折像の変化は、電子が透過できる部分があれば一応の解析はできる。 電子顕微鏡像の変化と対応させるために、JMTRで照射した試料についてX線回折と電気抵抗の変化についての測定を行った。照射温度は室温で0.25dpaと0.7dpaの照射を行った。格子定数、電気抵抗いずれも照射量によって増加し、格子の乱れが推察される。この照射後試料について1700Kまでの真空加熱焼鈍を行い、回復挙動についても測定した。X線回折の結果では、1000K付近から回復が始まり0.25dpa試料では、1700Kで殆ど照射前の値に戻るが、0.7dpaの照射試料では約半分の回復である。電気抵抗の結果では、いずれの試料についても殆ど回復せず、むしろ増加の傾向がみられ解釈が困難で、組織変化との対応が待たれる。また、実際の核融合炉で問題となる水素の保持特性についても検討を行った。
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