本年度は、試料を作成するためのDC放電による低温プラズマ生成装置を製作した。実験では、プラズマを用いて薄膜を製作するので、製造時の不純物除去のため高真空が要求される。この仕様を満たすためにステンレス製の真空装置とターボ分子ポンプを組み合わせた。既に、ベース真空度で2×10^<-8>torrを達成している。また、プラズマ製作用のガスには高純度の重水素、ヘリウム、メタンを用いて、電極の炭素(グラファイト)をスパッターさせ、その上に薄膜を製造する方法と炭素を含むプラズマを金属電極のDC放電で作り、試料に浸した。途中、常温での放電では、炭素電極のポイントエミッションが大きくなるため電極をSUS304に変更した。プラズマパラメータの指定は、温度を電極の印加電圧で、密度はガス流量と圧力によって行っている。次ぎに、電極の温度制御用の加熱を行う予定である。この方法で、実機の対向材の構造変化を模議した。そして、同一のパラメータで厚さの違う薄膜をいくつか製作した。 このようにして作った薄膜を高真空の下で一端800度以上に昇温加熱し脱水素をさせ、その後の表面積を測定する為に、吸着ガス雰囲気に入れる計画である。吸着ガスには、窒素、アルゴンを用いる。この吸着ガス測定用の試料室を現在製作中である。 実験に先立ち試料とプラズマの相互作用の数値シミュレーションを実行した。解析には比較的簡単なDLAモデルを用いた。従来のモデルでは付着効果しか考慮されていなかったが、今回は消滅因子を導入し試料からの離脱効果を考慮したモデルを使用した。その結果、消滅因子が入った場合、フラクタル次元とともに密度分布が変化することが解った。また、不純物が燃焼プラズマに及ぼす影響を数値シミュレーションした論文を提出した。 今後、更に実験と計算を進める予定である。
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