温室効果ガスの一つであるメタンは、湛水水田土壌を含む様々な嫌気環境下において絶対嫌気性細菌であるメタン生成細菌によって生成される。近年、種々の嫌気的環境下で、H_2利用性のメタン生成細菌が原生動物細胞内に共生していることが知られてきている。本研究では水田等の嫌気生態系における原生動物内部共生メタン生成細菌の分布と、この共生系がそれぞれの環境下におけるメタン生成にどの程度関与しているかを明らかにすることを目的とした。本年度は、まず、水田土壌、稲の刈株、稲藁等の水田生態系におけるメタン生成細菌の分布と生存について調べ、さらにこれと原生動物との関係について検討し、以下の結果を得た。 1.水田土壌から湛水前に採取した稲の刈株を嫌気的に湛水すると、基質無添加でもH_2とメタンが生成された。 2.刈り取り後、室温で保存されていた稲藁の根元に近い部分を同様に湛水するとH_2は生成されたが、メタンは生成されなかった。 3.風乾して2年間保存した水田土壌を同様に湛水すると、H_2もメタンも生成され、乾燥下で空気に長期間触れる状態でも、絶対嫌気性細菌であるメタン生成細菌が生存できることが明らかになった。 4.これらの試料中のメタン生成細菌数を計数したところ、刈株中には10^3/g、風乾水田土壌中には10^4/gのレベルでメタン生成細菌が検出された。 5.これらの試料を湛水し、出現する原生動物を顕微鏡観察したところ、風乾土壌からは原生動物の脱シストを確認できなかったが、刈株を半好気的に湛水すると、繊毛虫を主とする多くの原生動物が脱シストするのが確認できた。これらの原生動物の細胞中のメタン生成細菌の存在を、蛍光顕微鏡で観察した。
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