地球レベルでの二酸化炭素の収支が大きな社会的関心を集めているが、このような大きなスケールでの議論では、もっとも精度荒くデータが集められた部分がシュミレーションモデルの結果を左右する。そこで、水圏生態系における重要度の大きな微小プランクトンの現存量の高精度測定法の確率に取り組んだ。手法としては、落射蛍光・位相差顕微鏡に画像解析装置を接続し、位相差による細胞外部形態の測定と同時に、異なった蛍光染色による細胞パラメーターの測定を試みた。バクテリアを材料としたモデル実験から、DAPI染色によって細胞核の形状情報が、またAcridine orange(AO)染色からRNA含量の変化が把握されうることを確認した。成果は、平成6年(1994年)10月に東京で行われた国際シンポジウム、"Microbial Diversity in Time and Space"で報告し、さらに論文としてPlenum出版社から1995年に出版される同名の成書に掲載される(成果1)。 ついで、同じくバクテリアを材料に増殖速度と各種細胞パラメーターの変動の関係について実験的解析を行った。その結果、増殖速度と細胞サイズには密接な関係があることを見いだした。さらに細胞サイズを支配するのはRNA含量であることが、従来化学分析から認められていたが、これを直接顕微鏡下で確認し、その変動は細胞周期に左右されていることを明らかにした。またバクテリア研究にとって重大きな課題であった、どのようなバクテリア細胞は培養が可能であり、またどのような細胞は培養できないかについて、細胞周期やRNA含量との関わりで、これに新たな解釈を加えることができた。成果2としてこれをとりまとめ、現在Applied and Environmental Microbiologyに投稿中である。
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