研究概要 |
地下水・河川水・湖水等の陸水中での濃度増加が顕在化しつつあるNO_3について,原因と影響等の相互の連関を降水や土壌水との関係も含めて評価するために研究を進め,以下のような結果を得た。 (1)田園地河川におけるNO_3収支の調査と解析 昨年度に引き続き,4月下旬から7月上旬の水田の潅漑期間を主とした75日間に田園地河川(霞ケ浦への流入河川の恋瀬川,流域面積147.4km^2)の上流から下流までの6地点で頻度の高い47回の定時流出調査を実施した。これらの調査結果と同一河川で過去の1年間毎週1回定時で52回の調査結果等から,湛水期間のNO_3を中心とする窒素の流出負荷量変化を追跡・検討し,1年間に対して湛水期間のNO_3流出負荷量のウエイトの大きさを定量評価すことができた。水稲移植前後の4〜5月の6週間の流出負荷量平均値は,年間流出負荷量の平均値を上回ることが裏付けられた。 (2)降雨時流出に伴うNO_3の土壌層からの排出量評価 昨年度と同様に,上記の定時調査を行った田園地河川中流部の1地点において,3回の降雨時流出負荷量調査を実施し,降雨量,降雨強度,先行晴天日数や,降雨前後のNO_3濃度レベルの変化の関係から,降雨に伴う山地・畑地等の土壌層からのNO_3排出量の大きさが比較評価できた。 (3)大気からの窒素降下物負荷量の観測継続による評価 大気からの降水中のNO_3,NO_2,NH_4の負荷量を継続観測し,降雨量が少ない年の年間NO_3負荷量は降雨量に比較的に小さくなる傾向が確認され,昨年度との整合性も確認できた。 (4)耕地への窒素肥料投入量の経年変化調査 昨年度に引き続き,調査対象流域等での農耕地への窒素施肥量に関する経年変化の資料収集を行うとともに,家畜糞尿の処理・処分による窒素負荷排出源の寄与度の評価を行った。 (5)地下水のNO_3濃度レベルの経年変化の調査 昨年度に加えて,霞ケ浦集水域を主対象に,農業井戸等による地下水のNO_3濃度レベル経年変化の文献資料等の収集を行った。
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