研究概要 |
農地への多量の化学肥料の継続的投入,畜産廃棄物の不完全な処理・処分,下水道の高度処理の未普及等によって流域からの窒素酸化物負荷量の流出が目立って増加傾向にある。特に,葉菜類の畑作物や芝育成畑等の特定銘柄指定産地からの集中的な排出による硝酸イオンの高濃度での流出が著名である。煙突からの排気,ディゼル車の排ガス等によるNO_x等による大気降下物の負荷の増加の背景もある。これらの結果,降水・陸水・土壌水・地下水の窒素濃度の上昇傾向が見られている。 今年度は,最終年度のため最上流部は山林,緩傾斜部は畑地,平地部は水田という地形連鎖で河川の両側に立地する恋瀬川流域で,水田からの硝酸イオンの排出が最も大きい湛水期間に,河川流下方向での流出負荷量変化の調査を実施した。また,降水については,つくば市での11年間の調査の継続から,年間降下負荷量の経年変化の特徴として,年間降水量の多い年に降下負荷量が比例的に大きくなることを明らかにした。さらに地下水中の硝酸イオン濃度の経年的増加傾向を,収集した研究資料の解析から明らかにした。流域から排出される硝酸イオン負荷量をその流域からの出力(output)の大きさとして,流域への入力(input)に対する比で相対的な流域負荷量レベルのスケール表現とした。 すなわち,降水中の全窒素は硝酸態窒素となって流出するベース(バックグラウンド)入力と考えて,年間の窒素降下物負荷量に対する河川の総流出負荷量の比の大きさで硝酸イオンの人為入力のレベルを比較した。流域内の土地利用形態別面積で畑地・茶園等樹園地が占めるウエイトの高い流域での比が大きく,年間降水量が大きい年ほど大きな値となる傾向が明らかになった。土壌水や地下水濃度の経年増加は,流域内での硝酸イオン蓄積量の指標として評価を行った。
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