研究概要 |
逆相高速液体クロマトグラフ(RP-HPLC)と誘導結合プラズマ質量分析装置(ICPMS)とを連結した計測方法(HPLC/ICPMS法)により,Zn^<2+>あるいはCd^<2+>ストレス下で培養したラン藻中に,主に2つのメタロチオネイン(MT)アイソフォームが誘導されることを明らかにした.これら2つのアイソフィームはアミノ酸組成にわずかな相違が認められた.Zn-MTアイソフォーム溶液中にCd^<2+>を添加すると定量的にZn-MTからCd-MTへの金属交換が生じた.これはMTに対してCd^<2+>の方がZn^<2+>よりも高い親和性をもつことを反映している.この交換過程において2つのアイソフォームの相対比にほとんど変化がなかったことから,これらのアイソフォームは同レベルのCd親和性をもつことがわかった. これら2つのアイソフォームは,Zn^<2+>投与(1-2020μM)においてほぼ一定の比で誘導されたのに対し,Cd^<2+>投与(0.5-10μM)の場合は投与量に応じて誘導量の比が変化した.このことから,Cd^<2+>の無毒化には,RP-HPLCクロマトグラフ上で保持時間の短いアイソフォームがより重要な働きをしていることが示唆された. セレン酸あるいは亜セレン酸共存下において,Zn^<2+>ストレスによりラン藻体内に誘導されるMT中へSeが高い濃度で取り込まれることが明らかとなった.亜セレン酸を含む培養液中では,ラン藻破砕後の水溶性画分に含まれる全Se量の58%もがMTと結合していた.このMT中のSeは,主に2つの化学形態で存在することを初めて明らかにした.ひとつはS-Se結合で,2-メルカプトエタノールの存在により還元的に開裂する.もう一つは,セレノシステインが合成されたのちMTのペプチド鎖に取り込まれる形態である.培養液に加えたセレン酸と亜セレン酸とでは,MT中へのSeの取り込みにほとんど差はみられなかった.
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