本研究は、DNAのモデル物質として、チミジリルチミジン(以下TpTと略記する)を採用し、太陽光によって生成されるチミン2量体量を高性能液体クロマトグラフ(HPLC)法で絶対値として測定する系を用い、有害太陽紫外線の実効光量計として確立しようというものである。本光量計によって、経時変化や装置に依存しない、物質固有の不変な性質のみに依存する測定法の確立を目指す。 TpT水溶液100mulを光路1mmの石英セルに入れ紫外線を照射し、すでに開発したHPLC条件下でチミンダイマーの生成量を絶対値として測定した。線量計として確立するために、本年度は、以下の2課題について研究を実施した。 I.TpTに生じるチミンダイマー量を太陽紫外線の実効光量計として確立するための基礎的研究を行った。【.encircled1.】生成効率の波長依存性を254-400nmにわたって決定した。【.encircled2.】生成率は溶媒を蒸留水、リン酸緩衝液、NaCl溶液にしても、変わらなかった。また、N_2で置換しても生成率は変わらず、これらの照射条件に依存せず一定の生成率が得られることがわかった。 II.太陽光照射によるチミンダイマー生成量を実測した。【.encircled1.】TpTのダイマー生成率が温度依存性を持つことがわかったので、TpTの温度を一定に保つ照射法を開発した。【.encircled2.】UVBメーター(英弘精機)で測定した太陽紫外線量とチミンダイマー生成量と良い比例関係が確認される。しかし、照射日によって比例係数の違いが認められたので、この原因を調べる必要がある。 以上の実験から、太陽紫外線の実効線量計としての実用的条件が設定できた。
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