アレルギー疾患の増加と大気汚染物質暴露による影響との関連について明らかにするために、今年度は、1)抗原特異的IgE抗体産生誘導の条件について検討した。抗原として卵白アルブミン(OA)を用い、ネブライザー使用によるエアロゾル投与を間隔をかえて10回まで実施したが、有意な抗原特異的IgE抗体価の上昇はみられなかった。しかしながら、抗原のみの点鼻、あるいは気管内投与では抗原特異的IgE抗体産生の誘導が認められた。 次に、2)気管内投与の実験系で、ディーゼル排気粒子(DEP)のIgE抗体産生系への作用について検索した。マウスにOA抗原とDEPとを混ぜて3週間間隔で3回投与すると、血中においてOA単独群に比べ有意に高い抗OAIgE抗体産生の誘導が認められた。そこで、DEP+OAを投与されたマウスとOAのみを気管内投与されたマウスの投与部位にもっとも近い縦隔リンパ節からリンパ球を取り出し、OA抗原と〓臓より調製した抗原提示細胞と共に培養し、インターロイキン4(IL-4)産生能を比較した。まず、リンパ節細胞の増殖反応では、OA単独群よりDEP+OA群でより高い反応がみられた。培養上清中のIL-4産生量をIL-4依存性HT-2細胞の増殖で調べると、明らかにDEP投与群でIL-4産生の亢進が認められた。 これらの結果から、DEP粒子にはTリンパ球より活発に産生、放出されるIL-4因子の産生を亢進させ、血中でのIgE抗体産生増強を誘導させる作用があることが示唆され、今後のディーゼル排気暴露実験での影響解明、更にアレルギー疾患増加との関連解明に大いに役立つ知見と考えている。
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