研究概要 |
本年度は、大気汚染物質としてのNO_2とディーゼル排気粒子(DEP)を用いてアレルギー反応誘導について検討した。 1)ラットとモルモットを0,0.5,1.0そして2.0ppmNO_2の3カ月暴露して、肺肥満細胞からのヒスタミン遊離作用の修飾について調べた。その結果、IgE抗体を介してのヒスタミン遊離においては、暴露したラット肺肥満細胞からの遊離は、対照群からの遊離より抑制される傾向であった。他方、暴露したモルモット肺肥満細胞からのヒスタミン遊離は、対照群に比べ有意な亢進が認められた。イオノフォアA23187刺激によるヒスタミン遊離は、ラット、モルモット共にNO_2暴露群と対照群の間に差はみられなかった。 2)昨年度の研究で、DEPと卵白アルブミン抗原の気管内投与により縦隔リンパ節細胞からのIL-2、IL-4産生の増強がみられたので、DEPと抗原とを点鼻投与してサイトカイン産生の変動について調べた。ディーゼル排気ガスは花粉症発症との関連が示唆されており、点鼻投与は通常の生活で遭遇する投与に近いと考えられた。その結果、DEPと抗原を3週間間隔で3回投与後、頸部リンパ節細胞からのサイトカイン産生をELISA法で測定すると、DEP投与群でIgE抗体産生の増強に働くIL-4産生は亢進し、逆に、IgE抗体産生を抑えるIFN-γ産生は抑制されることが明らかとなった。 ディーゼル排気ガス暴露実験は、暴露施設の完成が遅れたためにいまだ実験中であり結果を得るにいたっていない。しかしながら、DEPの投与実験によりサイトカインレベルでの変動が明らかになり、今後暴露実験でも同様な結果が確認できれば、影響指標に加えられるかもしれない。
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