本研究ではまず第一に1985年の北海道産業連関表、道民経済計算、昭和48年産業公害分析用産業連関表、及び北海道の産業廃棄物実態調査報告書などを用い、1985年の北海道における廃棄物-経済会計行列の作成を行った。この行列は産業3部門(1次、2次、3次産業)、2制度部門(民間部門、政府)、2生産要素(労働、資本)、廃棄物処理部門、道外部門からなっている。この行列を用いることにより、産業活動や家計の消費活動に伴い、どの程度の廃棄物が発生し、またその処理費用はどの程度であるのかを把握することが可能である。この行列を用い、産業連関分析と同様な逆行列表を作成し、リサイクル導入に伴う経済波及硬化の計測を行った。本研究の特徴は生産活動のみならず、家計部門や政府についても内生化されたている事があげられる。これによりリサイクル導入に伴う生産費用の増加などについても、その影響を調べることができた。またこの逆行列表を3つの行列の積として表す逆行列分解法を開発し、産業活動→廃棄物除去活動→経済活動という経済の循環構造を、より詳細に見ることも可能となった。 第二には、廃棄物-経済応用一般均衡モデルのプロトタイプの作成を行った。これは廃棄物-経済会計行列の数値は、経済が長期均衡状態にあることを反映したものと見なすことにより、各変数値が利潤最大化や効用最大化の結果として実現されたものとし、モデルを構築するというものである。従って、経済の変化を数量的変化のみに留まらず、価格変化をも計測できるという利点を持つ。そしてこのモデルを用いて、様々な経済活動が廃棄物発生にどのような影響を与え、またその処理費用がどのように経済活動に影響を及ぼすのかをシミュレーションした。シミュレーションケースとしては、家計廃棄物排出に対する有料化の導入、廃棄物処理・処分費用のための直接税強化、産業活動や廃棄物処理・処分活動における技術進歩、家計や産業におけるリサイクル活動の推進などを設定し、それらの施策や経済構造の変化が廃棄物発生量、産業構造、所得水準、家計効用などにどのような影響を与えるのかを考察した。
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