今年度は特に活性炭を担体として用いた嫌気性流動床プロセスによるフェノールの分解を中心に検討した。本プロセスにおいては流入水の濃度変動を与えても処理水質が悪化することなく良好なメタンへの分解が起きるが、その際の物質収支を活性体への吸着量をソックスレ-抽出で評価した。その結果、高濃度の基質が流入している時には急速にフェノールは活性炭に吸着され、その後の過程で8割程度が脱離してメタンに転換していることが証明できた。次に、意図的に流入基質の濃度を変動させることによる反応速度の向上の有無を調べるため、吸着が起きている際と脱離が起きている際のメタン生成速度をバルク水の基質濃度に対して解析した。その結果、さほど顕著ではないが、脱離期にはバルク中の濃度から予想されるよりは反応速度が大きくなっていることがわかり、意図的な運転によって嫌気性処理の反応効率を向上させることが可能であることが示唆された。更に、この反応速度の向上のメカニズムを明らかにするため、炭素の安定同位対C13を用いた実験を行った。フェノールを吸着させた生物活性炭を流動床から取り出し、バッチ実験を行った。その際、バルク水中のフェノールをC13でラベルしたフェノールに置換し、発生するメタン、残存するフェノール中のC13をGCMSで定量した。その結果、吸着されているフェノールが分解される際には、それが一旦バルク水に脱離した後メタンに転換するのではなく、かなりの部分は活性炭から直接生物膜に供給されていることが示された。すなわち、生物活性炭プロセスにおいて活性炭表面に付着した生物膜はバルク水側と活性炭側という膜の両側から基質供給を受けることが可能であることがわかった。この点は嫌気性生物活性炭の大きな特徴であり、今後この特徴を伸ばすような運転方法の開発が望まれる。
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