研究概要 |
DBF63株のダイオキシン、ジベンゾフランの代謝に関与する初発酸化酵素反応を含む全分解系を遺伝学的に解析していくという長期的展望のもとに、遺伝子のクローニングを行ない取得された遺伝子の構造解析を行なった。 メタ開裂酵素遺伝子については既に1クローンが取得されている(pLM1)。これとは異なる類似の遺伝子の存在が示唆されていたため、その取得を試みた。取得されている遺伝子の内部にはSphIサイトが存在しているため、類似の遺伝子を確実に取得するためにE.coli MV1184株とpUC119の宿主ベクター系、SphI siteを用いてショットガンクローニングを行なった。形質転換体のコロニーに、基質であると推定される2,2′,3-trihydroxybiphenylの類縁体のカテコール混合液(catechol,3-methylcatechol,4-methylcatechol,3-phenylcatecholの1%水溶液)を噴霧し、環開裂物質の生成によるコロニーの黄変により活性のあるクローンを検出した。新しく得られる遺伝子を含むプラスミドpKN1はそれまでに得られたpLM1とは異なった制限地図を有しており目的の遺伝子断片を含むことが確認された。このpKN1を有するMV1184株の細胞粗抽出液での活性を測定したが、pLM1のものに比べて弱いものであった。これら2種のメタ開裂酵素遺伝子が取得されたので、その塩基配列の決定を行ない、他の芳香族化合物の分解系に関与する遺伝子群との比較・検討を行なった。pLM1のメタ開裂酵素遺伝子はプロモーター様配列を有し、下流にメタ開裂反応による生成物の加水分解に関与する遺伝子をコードしていると考えられる。pKN1にコードされたメタ開裂酵素遺伝子も同様に、加水分解酵素遺伝子が下流に存在していると考えられた。今後は、両遺伝子の周辺領域について検討すると共に、さらにDBFの分解系について生化学的・遺伝学的に知見を深めていく予定である。
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