研究概要 |
潮汐ダムは湾の一部を堤防で仕切った貯水池と湾深部を導水管で結ぶことにより,潮汐の干満差を利用して貯水池海水を湾深部に導入・噴出することによって湾の鉛直循環を促進し,成層期に湾底に発達する貧酸素化を防止するものである。潮汐ダムの開発には【.encircled1.】湾の潮汐 【.encircled2.】導水管の水理 【.encircled3.】導水による鉛直循環規模 【.encircled4.】湾のDO環境と環境改善目標 の定量化が必要で,浦の内湾のクルマエビ幼稚仔魚保育場を実験用に改造した模擬潮汐ダム(貯水池面積1570m^2,管径300mm,管長11m,全損失係数7.4の流入導水管,管径200mm,管長60m,全損失係数14.6の流出入導水管)を用いて観測実験の結果,次の結論を得た. 【.encircled1.】湾の平均潮差は105.6cmで,湾外(桂浜)の98.4cmに比べて大きく,潮汐の位置エネルギーを利用する潮汐ダムは浦の内湾の貧酸素化防止に有効な手法である. 【.encircled2.】TPT(a)OPTに比べて潮汐エネルギーを有効に利用できる.また貯水池内は流れが形成されてDOが豊富なため,タイやクルマエビなどの放流場として,ヒラメやイセエビなどの蓄養場としての利用が可能である. 【.encircled3.】湾底の導入口前面は清浄で,多種の砂粒径から成り,多様な底生生物の生息に適した底質環境が形成される. 【.encircled4.】導水管の両端や内壁面にはフジツボなど生物が多量に付着し,導水機能を低下さす恐れがあり,その対策が重要である. 【.encircled5.】導水管水理算定法,噴流の鉛直循環規模算定法の精度を検討し,潮汐ダム規模の算定法を示した.同法に基づき浦の内湾の貧酸素化防止に必要な潮汐ダム規模を求め,水産・行楽など多目的潮汐ダムの造成例を示した.
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