佐賀低平地の水路網を対象として、現地調査を行い、低平地水路網の水質特性は湖沼型であることを明らかにした。また、水管理を行なう際に重要となる素過程は、沈降現象と富栄養化であることを明らかにした。沈降現象と富栄養化現象を規定する反応パラメータ(沈降フラックスと懸濁性物質濃度の関係、および藻類の増殖速度と藻類濃度との関係)を室内実験および現地観測データから求めた。低平地開水路網における流れと水質の予測モデルをグラフ理論に基づいて構築した。複雑な開水路網における水質予測モデルは、国内外において実用に供し得る段階にまで達していないことから、本研究では、まずモデルの検証とその有効性を確認するために現地観測データの再現性について検討を加えた。低平地水路網の水質特性が湖沼型であることを勘案して、水質項目は、懸濁性物質濃度、BOD5、そして藻類濃度(CODで表現)とし、各々の反応速度は室内実験及び現地観測データを基に定めた。モデルの整合性を確認し、いずれの水質項目も現地観測データを充分再現できることを確認した。モデル検証を行なった後、佐賀市街部の水路網を対象として、想定される長期・短期的水質管理方策について検討を加えた。短期的方策としては、下水道整備に至るまでの10〜20年間の水質管理策を想定し、清流からの導水計画が最も有効であることを明かとした。また、自然浄化機能を活用した水質改善策についても検討を加え、負荷削減効果は認められるものの、水質改善度を高めるには導水による希釈方式を併用する必要があることを指摘した。長期的には、富栄養化対策としても環境維持用水の導入が必要不可欠であることを指摘した。
|