研究概要 |
生体エネルギー変換膜ではポルフィリン誘導体が膜タンパク質中で配列し効率的な電子輸送を行っている。本研究はポルフィリン誘導体の複雑な電子輸送での距離と配向効果についてモデル化合物を用いて分子レベルで検討することを目的とした。ここでは、はじめに、距離と配向を制御できる膜タンパク質に結合したポルフィリン誘導体のモデル化合物として、両親媒性のポリエチレングリコール(PEG)と種々のメチレン鎖を介して結合したポルフィリン誘導体(PEG-Cn-MP,M=H_2,Mn,n=0,5,11)を合成した。そして、リポソーム膜を介するポルフィリン誘導体間の電子輸送での距離の効果について検討を行った。その結果、PEG-Cn-MPのポルフィリン部分はリポソーム膜の脂質二分子膜中で安定に存在し、PEG-Cn-MPのMn錯体は結合メチレン鎖長Cnに依存してリポソーム膜を介する電子輸送を行うことが認められた。特に、Cn=11の場合に顕著な電子輸送が見られたことからリポソーム膜中で電子輸送を行うポルフィリン間の距離は約0-5Aであると考えられた。つぎに、ポルフィリン誘導体の電子輸送での配向効果について検討するために膜タンパク質と結合したポルフィリン誘導体を作成した。膜タンパク質として、アミノ酸配列が既知な光合成細菌の光収穫系タンパク質を分離精製したものおよびそれのC端末を酵素で限定加水分解したものものを用いた。その結果、光収穫系タンパク質と結合したポルフィリン誘導体はいずれもリポソーム膜の脂質二分子膜中に再構成できることがわかった。そして、タンパク質のアミノ酸組成およびそれの配向によって電子輸送は大きな影響を受けることが認められた。
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