研究概要 |
本年度計画の生合成研究に関する結果から述べる。セコイリドイド配糖体を含有する植物アジサイ、スイカズラおよびフェニールエタノール誘導体を含有する植物レンギョウ属、ウチワノキの茎頂培養およびカルス培養により得た各細胞の成分検索を行い、各々目的物質を生産していることを確認するとともに、酵素活性を測定する際に必要なアッセイ系をほぼ確立した。投与実験に必要な生合成中間体loganinとdeoxyloganinの^2Hあるいは^3H標識体は各々の化合物を出発物質として6段階で合成した。標識は各化合物のグルコース部の6位に導入した。さらに想定中間体8alpha,10-及び8beta,10-epoxysecologaninをsecologaninを出発物質として5段階で合成した。同様な経路でそれぞれの^2H標識体を合成した。各標識体における^2Hまたは^3HはNaB^2H_4あるいはNaB^3H_4による還元により導入した。loganinよりsecologaninへの開環機構については植物体あるいは培養細胞への中間体の投与により、標識の取込みを確認し、現在酵素精製を行いその開環機構を検討中である。secologaninより各種secoiridoid骨格へ到る生合成研究については、上述の標識エポキシ体の投与実験より8beta,10-epoxysecologaninを経ることが判明した。さらに酵素レベルでの実験を行い、その機構につき詳細に検討する予定である。 モクセイ科植物の成分研究はウチワノキ、Fraxinus malacophyllaについて行った。一属一種の植物であるウチワノキからはモクセイ科植物に広く分布しているセコイリドイドは単離されず一種の新規のquinol glucosideを含め4種の同系誘導体を単離した。また後者の植物からは2種の新規物質を含め6種のセコイリドイド配糖体を単離した。このようにモクセイ科植物でもイリドイド系物質含有植物と不含植物とがあり、同科の系統分類や進化の観点から新たな問題を提起しており、他の本科植物についても現在成分検索を続行中である。
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