研究概要 |
1.S-アデノシルメチオニン(AdoMet)をメチル基供与体とするメチル基転移酵素(MT)のうち、特に哺乳動物の酵素のAdoMet結合部位に関する情報を得るため、組換体ラット肝グアニジノ酢酸メチル基転移酵素を用い、AdoMetによる親和性標識部位近傍に存在し、かつ他の酵素にも共通な残基であるAsp^<134>とその周辺残基への変異導入による解析を行ない、Asp^<134>は本酵素の活性発現、特にAdoMet結合に重要な残基であることを明らかにした。この共通領域はAdoMet結合ドメインの一部を形成するものと考えられる。(J.B.C.1994) 2.グリシンメチル基転移酵素(GMT)においては、ラット肝酵素はAdoMet結合に関して正の協同性を示すことが藤岡等によって示されているが、ウサギ肝酵素は協同性を示さないと報告されており、動物種間で構造上の違いが存在することが予想されたので、ヒト、ウサギ、ブタの各肝酵素をクローン化し、既に得られているラット肝酵素も含めてその一次構造比較を行なったところ、種間の差は少なく、ラット肝酵素のみが中央部で2残基を欠くというやや特異的な構造を持っていた。肝の粗抽出液での初速度解析により、いずれの酵素もAdoMetに関して正の協同性を示すことが明らかになった。(Comp.Biochem.Physiol.1993) 3.ウサギ肝GMTを大腸菌で発現させたところ、組換体酵素はAdoMetに関して正の協同性を示さなかった。天然の肝酵素との構造の違いは、天然の酵素のアミノ末端Val残基はアセチル化されているのに対し、組換体酵素では遊離であることだけであり、アセチル化が協同性の発現に重要な役割を担っていることが示唆された。この結果は、翻訳後修飾の一つであるアセチル化の役割に関して新しい視点を与えるものと考えられる。(第66回日本生化学会大会発表,1993)
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