deltaとmuのオピオイド受容体サブタイプを高選択的に識別して、アフィニティラベル(親和標識)するエンケファリンおよびモルヒネの誘導体を分子設計した。これら誘導体の特徴は、3-ニトロ-2-ピリジンスルフェニル(Npys)基で活性化したチオール基を持つことである。本研究に於いては、これらNpys-誘導体の結合特性に着目し、これらを架橋したアフィニティゲル担体の調製およびオピオイド受容体の精製・単離を試みた。 (1)Npys-エンケファリンのアフィニティゲル調製とオピオイド受容体の精製、分取、解析:Npys-システインを6位に組み込んだエンケファリンを化学合成し、AF-アミノトヨパール650ゲルに結合させた。このゲルと可溶化したラット脳のホモジネートを反応させた。次いで、ジスルフィド結合でゲル・エンケファリンに共有結合した受容体を溶出させるために、10mMジチオスレイトール水溶液で処理した。SDS-PAGE電気泳動で調べた結果、delta型受容体に相当するタンパク質が濃縮して検出され、本法が受容体の精製に有効なことが確認された。一方、同時にmu型およびkappa型に相当するタンパク質も検出されたが、これら以外のタンパク質は検出されなかった。従って、ゲル・エンケファリンの選択性を向上させれば、どの受容体の識別精製も可能なことが判明した。現在、ブロッティング分取し、アミノ酸配列を解析中である。 (2)アンタゴニストのアフィニティゲル調製: モルヒネのアンタゴニストであるナルトレキサミンの誘導体を化学合成し、上記のゲルに架橋させ、同様にラット脳からの受容体の精製を試みた。その結果、mu型受容体を選択的に精製できた。現在、アミノ酸配列の解析中である。 このように、オピオイド受容体の精製・単離の手法としてNpys-エンケファリンあるいはモルヒネのアンタゴニストのアフィニティゲル法の有効性が確認された。
|