本年度はラット血液中でフリーラジカルを生成すると言われているフェニールヒドラジンの代謝についてマイクロダイアリーシス/HPLC/MS法を用いて研究を行った。まずラット血液を採取し、in vitroでマイクロダイアリーシスを行った。ラット血液中にフェニールヒドラジンと4-POBN(スピントラップ剤)を添加し、10分ごとに透析液を分取した。透析液が少量(数十マイクロリッター)であるためHPLC/ESR分析をせず、直接Continuous Flow FAB分析を行った。透析液中にはスピンアダクト以外に多くの物質が存在するので、スピンアダクトをマススペクトロメトリーのみで検出するためにMS/MS法を適用した。MS/MS法によるスピンアダクトの壊裂パターンを知るために、種々の精製スピンアダクトのMS/MS測定を行った。フェニールラジカルと4-POBNのスピンアダクトは特徴的な開裂パターンを示すことが明らかになった。この情報はin vivoでのスピンアダクトの検出に対して重要な情報である。 マイクロダイアリーシスを用いて得られる透析液の量は僅かであり、検出感度の劣るESR法での検出は困難であった。検出感度を向上させるためにスピンアダクトの電気化学検出器による検出を試みた。電気化学検出器を用いるとスピンアダクトのラジカル型のみでなく還元型も検出可能であることがわかった。電気化学検出器を用いることによりスピンアダクトの生体内での代謝(酸化-還元)についての情報も得られることが示された。
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