原核細胞は染色体を封じ込めている核膜や、細胞分裂の時に現れて染色体を二つの娘細胞に分離する紡錘糸の存在しないことで、真核細胞と決定的に異なると言われてきた。研究代表者らは細胞分裂の際の紡錘糸の原型を思わせるような、細胞質を貫通する強靱なタンパク質構造体を見いだし、関係する遺伝子cafAも明らかにした。これらを含む一連の研究の中で、原核生物と真核生物の相互関係を追跡し、その間隙を埋めることは極めて重要である。代表研究者らの研究は、次の2つの方向で行われた。 1.CafAタンパク質の構造と、それより推測される機能の研究。データベースによるホモロジーの検索の結果、CafAタンパク質は大腸菌のmRNAの分解に関与するAmsタンパク質と、酵母のミオシンタンパク質にホモロジーのあることが見いだされ、CafAタンパク質にミオシン様の細胞骨格性タンパク質の機能があることが期待された。 2.CafAタンパク質変異株の性質と、それより推測される生理的機能の研究。CafAを欠損する変異株は42-44°で多少の温度感受性を示し、また7%のKClに対しても感受性が高かった。これらの実験結果と他の実験結果より、CafAタンパク質が細胞増殖のシグナルに関連して機能している可能性が浮上してきた(1994年日本農芸化学会大会講演)。
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