ヒト組織因子の立体構造の解析

1993 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 05680539
• 研究機関: 国立循環器病センター
• 研究代表者: 宮田 敏行 国立循環器病センター研究所, 脈管生理部, 室長 (90183970)
• 研究分担者: 小林 祐次 大阪大学, 蛋白質研究所, 助教授 (20127228)
• キーワード: 血液凝固 / 組織因子 / NMR / 立体構造

研究概要

ヒト組織因子の細胞外ドメインを酵母で大量発現させた。酵母の発現ベクターであるpAM82の酸性フォスファターゼプロモーターの下流に細胞外ドメインのDNAを挿入したところ、43kDaの組換え体が約1mg/リットル培地で発現した。また、3つの糖付加Asn残基のうち、Asn-137をAlaに変異させたところ、発現量が2倍上昇した。この変異体を大量培養し、約1gの組織因子細胞外ドメインを精製した。
本組換え体のサブドメインを単離するため、トリプシンやキモトリプシン、Staphylococcus aureus V8プロテアーゼを用いて断片化を試みたところ、いずれの酵素を用いてもうまくサブドメインへと断片化されなかった。したがって、現在のところ、NMRの分析による組織因子の立体構造の解析は進んでいない。NMR測定のためのサブドメインを調製する目的で、大腸菌および酵母の発現系を用いてサブドメインだけの発現を試みたが、発現しなかった。そこで、細胞外ドメインのサブドメイン間に凝固Xa因子の認識配列を挿入し、この変異細胞外ドメインを発現させ、凝固Xa因子で切断することにより、サブドメインを調製することを試みている。現在、本変異体の発現に成功したところであり、これからサブドメインの調製を行なうところである。
一方、細胞外ドメインが大量に調製できたので、結晶回析を行なう目的で、目下、各種条件下で結晶化の検討を行っている。

研究成果

• [文献書誌] F.Tokunaga: "Limulus hemocyte transglutaminase:Its purification and characterization,and identification of the……" J.Biol.Chem.268. 252-261 (1993)
• [文献書誌] H.Nagata: "Inhibition of coaggregation between Porphyromonas gingivalis and Streptococcus oralis by fibrinogen……" FEMS Microbial.Lett.114. 31-36 (1993)
• [文献書誌] H.Nishimura: "Factor IX Fukuoka:Substitution of Asn 92 by His in the second epidermal growth factor-like domain……" J.Biol.Chem.268. 24041-24046 (1993)
• [文献書誌] K.Kario: "Factor VII in non-insulin-dependent diabetic patients with microalbuminuria." Lancet. 342. 1552 (1993)
• [文献書誌] T.Miyata: "Three hereditary protein C deficiencies caused by three distinct point mutations in the heavy chain of" Thromb.Haemost.71. 32-37 (1994)
• [文献書誌] K.Kario: "Fluorogenic assay of activated factor VII:plasma factor VIIa levels in relation to arterial" Atheroscler.Thromb.(印刷中). (1994)
• [文献書誌] H.Takeya: "Snake venom hemorrhagic and nonhemorrhagic metalloendopeptidases." Academic Press, 14 (1993)
• [文献書誌] 宮田敏行: "血液凝固・線溶因子の分子異常に関する研究" 社団法人、日本生化学会, 25 (1993)