NMR法を用いて、ヒト組織因子の細胞外ドメインを構成する2つのサブドメインの立体構造を解析する目的で、組み換えDNAの手法を用いてサブドメイン間に凝固第Xa因子の認識配列を挿入し、変異細胞外ドメインを酵母を用いて発現させた。培養上清から3種のイオン交換カラムを用いて変異細胞外ドメインを単離した。この過程で、サブドメイン間に切断が生じ、最終標品として2つのサブドメインが単離できた。このサブドメインの分子量はSDSポリアクリルアミド電気泳動により16kDaと24kDaを示した。アミノ酸配列分析の結果、16kDaはNH_2末端由来のサブドメイン(N-ドメイン)であり、24kDaはCOOH末端由来のサブドメイン(C-ドメイン)であった。また、両ドメイン間の切断は、導入した凝固第Xa因子認識配列で生じていた。組織因子由来のサブドメインが、凝固第VIIa因子の合成基質水解活性に対する組織因子の増強効果を保持してるかどうかを調べたところ、N-ドメインには活性を検出できなかったが、C-ドメインは約3%の活性を保持していた。また、両ドメインを等モル混合すると約60%の活性が回復した。したがって、組織因子活性には両ドメインが必要であることが判明した。また、単離した各ドメインは失活していないことが判明したため、本ドメインをNMR測定の試料として使用し、その立体構造を明らかにできる道がひらけた。 一方、組織因子細胞外ドメインが大量に調製できたので、第VIIa因子との複合体の結晶化を各種条件下で検討している。
|