1.従前の実験で市販スンクス(Jic:SUN)ではスクラーゼとイソマルターゼの活性及び両者の活性化(S/I比)が個体によって変動することが分かっていたので、先ず、個体毎にホモジネートの両酵素活性を測定した。調べた49匹のうち、S/I比から遺伝的にホモと思われたのは17匹であった。なお、スクラーゼだけでなくイソマルターゼも欠損したスンクス1例見つかった。スンクスで初めての例であったが、その両親を同定できなかったのが残念である。ホモのスンクスを二分(9匹と8匹)し、精製を行った。ホモジネート、膜画分、トリトンX-100とデオキシコール酸による可溶化、Sephadex G-200ゲルによる温度依存性アフィニティクロマトグラフィを行って精製酵素約2mgを得た。 2.本精製酵素の比活性をスクラーゼ欠損スンクスからの精製イソマルターゼのそれと比較すると、スンクスの場合、スクラーゼ・イソマルターゼ複合体のもつマルターゼ活性は殆どスクラーゼ部分に由来すると結論される。これはスクラーゼとイソマルターゼがほぼ等しいマルターゼ活性を持つという他のいくつかの哺乳動物と大きく異なる。 3.精製酵素はSDS-PAGEで96、116、及び212kDaのバンドを与えた。精製イソマルターゼは96kDaのバンドのみであったから、116kDaはスクラーゼで212kDaは未解離の複合体と考えられる。 4.精製酵素をFreundの完全アジュヴァントと混合してウサギを免疫し、抗血清を得、抗血清を硫安分画してγ-イムノグロブリン(IgG)画分を採った。IgG画分と精製酵素を用いて試験管内沈降反応を行ったところ、スクラーゼもイソマルターゼも完全に沈降したが、両活性そのものは殆ど影響を受けなかった。これは、イソマルターゼ活性を90%も阻害するヤギ抗ウサギ抗体の場合と異なるが、ヤギ小腸がイソマルターゼを欠くことを考えると興味深い結果である。
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