研究概要 |
(1)SPT遺伝子のcAMP応答領域の解析 種々の長さのSPT遺伝子上流域を含む組換え体を培養細胞にトランスフェクトして、その転写活性に及ぼすcAMPの効果を調べた結果、当初予想していた -684〜-621に存在するcAMP responsive element(CRE)ではなく、-103より下流の領域が転写促進に寄与していることが判明した。この領域は基本プロモータに相当し、ホルモン非添加時のBasalな転写活性にも必須であった。cAMPによるSPT遺伝子の転写促進が蛋白質合成阻害剤であるシクロヘキシミドで抑制されることから、CREB(CRE Binding Protein)がまず、あるGeneralな転写因子遺伝子の転写促進をひきおこし、つぎにその翻訳産物である転写因子がSPT遺伝子の-130よりも下流の領域に作用し、その結果SPT遺伝子の転写促進が引き起こされるものと考えられた。 (2)SPT遺伝子発現と細胞特異性 動物においてSPT遺伝子はおもに肝臓で発現されている。ヒト肝ガン由来のHepG2 Cellsのほかにいくつか由来の異なる細胞株(HeLa,CHO-K1,CV-1,COS-1)についてもSPT遺伝子のBasalな転写活性、およびcAMPの効果を調べた。SPT遺伝子の-103〜+36の領域、すなわち基本プロモータに相当する部分のみをレポーター遺伝子に連結したブラスミドでは HepG2 のほかに HeLa,CHO-K1 で同程度の Basal な転写活性がみられた。さらに-193まで連結した組換え体を用いたところ、HepG2では5倍ほど Basal な転写活性が増加したが、他の細胞ではほとんど変化がなかった。いずれのサイズの5'上流域を含むプラスミドを用いても、cAMPで著名な転写活性の促進が見られたのは HepG2 だけであった。 以上の結果より、ラット SPT 遺伝子の -192〜-103 には肝特異的な発現促進に関わるエレメントが、また -103 より下流には cAMP により転写促進される肝特異的転写因子の結合部位が存在すると推測された。
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