研究概要 |
近年、前骨髄性白血病の治療にオールトランスレチノイン酸(RA)がきわめてよく効くことが発見され、そのことが注目されている。治療効果はRAの分化誘導効果によるのであるが、分化の機構はいまだに不明である。ミエロペルオキシダーゼ(MPO)は、顆粒球の分化の過程の前骨髄球で特異的に合成される。その遺伝子の発現のON-OFFは白血病細胞や正常顆粒球の分化と強い相関がある。白血病HL-60細胞やSKM-1細胞のMPO遺伝子はONであるが、細胞をRAや1α、25(OH)2ビタミンD3(D3)で処理すると、OFFとなる。本研究は、細胞タイプ特異的MPOの発現とその調節機構の解明を目的とした。 MPO遺伝子の転写調節領域(シス-エレメント)を遺伝子断片のエンハンサ活性の解析とDNAメチル化干渉法やDNaseIフットプリント法をもちいた核タンパク質とDNAとの相互作用の解析から同定した。エレメントの1つは、イントロン7にあり、エストロゲン応答配列の保存配列、ほかはイントロン9にあり、4lbpの新しい配列であった。 他方、SMK-1細胞のMPO遺伝子発現に対すRAとD3の影響につい研究した。低い濃度のRAとD3単独では発現をOFFにしないが、両方を共存させると、OFFにした。これらの結果は、RAとD3のレセプタのクロストークがあることを示唆する。 今後、MPO遺伝子の2つのシス-エレメントに結合するDNA結合タンパク質を分離し、諸性質明らかにし、さらに,RAやD3の転写への関与の機構を明らかにしたい。
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