研究概要 |
subunit b遺伝子の構造は,部分的にしか決定していなかったが,今年度,再度subunit bの遺伝子を含んでいるクローンを単離し,全構造を決定した.その結果,ヒトsubunit bは,8つのExonにわかれてコードされていることが明らかとなった.ついで,昨年度明らかになっていたlstイントロン内エンハンサーについて,コンピューターによるホモロジーサーチを行ったところ,この27bps断片中には,Spl結合配列が1つ存在していた.そこで,次にこのSpl binding siteが本当に転写の増強に関与しているかを調べるために,塩基置換を行いmRNAの量をRPA法で測定した.その結果,Splの特にコアになる部分のmutantでは元の活性の3分の1の活性となり,その後半部分を変異させたものは約65%の活性,Spl結合部位を欠損させたもので約60%の活性が残っていた.従って,subunit bのlstイントロン内エンハンサーは,Splだけでなく,+160〜+170の塩基配列が関係していると結論された. 次に,この部分の塩基配列に特異的に結合する核蛋白質の解析をゲル移動度シフト法により行った.プローブDNAとしては、subunit b遺伝子のlstエクソンとlstイントロンを含む172bpの断片をPCR法で合成し用いた.このラベルしたプローブDNAをHeLa cell 3SCから調製した核抽出蛋白質と反応させたところ,4本のバンドが観察された.つぎに結合の特異性を調べるため,プローブDNAと核抽出蛋白質と反応後,35bp断片(+149から+183)の非標識の二本鎖合成オリゴヌクレオチドを競合DNAとして加えたところ,これらの4本のバンドは消失した.従って,これら4本のバンドは,35bpの配列に核抽出液中の蛋白質が特異的かつ可逆的に結合したものと考えられ,これらの核蛋白質が,エンハンサーとして働いていることが強く示唆され,現在,non-binding mutations実験とそれらの蛋白質の単離精製を行っている.
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