研究概要 |
リポ酸はギリシン開裂酵素系のH蛋白質及びα-ケト酸脱水素酵素複合体のE2成分に補欠分子族として特定のリジン残基に共有結合しており,複合体の反応において反応中間体や還元水素の運搬体として機能している.動物組織においてリポ酸が蛋白質に結合するには2つの酵素,リポ酸活性化酵素とリポ酸転移酵素の関与が推定される.平成5年度に我々はウシ肝臓ミトコンドリアからリポ酸転移酵素の精製を試み,2つのアイソフォームの内,一方を単一に精製することに成功した.今年度の研究実績は下記の通りである. 1.精製したリポ酸転移酵素のN末端アミノ酸配列及びリジルエンドペプチターゼ処理で得たペプチドの部分アミノ酸配列を決定した.その配列をもとにオリゴデオキシリボヌクレオチドを合成し,それをプローブとしてウシ肝臓のcDNAライブラリーのスクリーニングを現在行っている. 2.我々はアポH蛋白質をリポ酸の受容体として用いてリポ酸転移酵素を精製したが,その酵素がリポ酸を補欠分子族として持つ他の蛋白,ピルビン酸,α-ケトグルタル酸及び分岐鎖ケト酸脱水素酵素複合体のE2成分にもリポ酸を転移するか否かをみるためにそれぞれのcDNAよりリポイルドメインをPCRで増幅,クローニングを行い,その転写,翻訳産物にリポ酸転移反応を行った.予備的実験で,精製酵素はいずれのリポイルドメインにもリポ酸を転移した.この結果は同じリポ酸転移酵素が4種類のアポ蛋白質を認識してリポ酸転移を触媒するという事を示唆する.
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