当初の計画通り、平成5年度はヒト遺伝子ライブラリーからジヒドロリポアミド・サクシニル転移酵素の遺伝子と類似遺伝子を単離し、それらの構造の解析を行った。 1.本遺伝子は約23kbほどの長さであり、15個のエキソンからなることが判明した。 2.エキソン-イントロン・スプライスィング・ジヤンクションはすべてag-gtルールに従った。 3.哺乳類のジヒドロリポアミド・サクシニル転移酵素はE1/E3結合ドメインを欠いているが、遺伝子レベルにおいてもその配列に対応するエキソンは認められなかった。E1/E3結合ドメインに対応するエキソンは進化の過程のなかで隣接するイントロンと共に欠落したものと思われた。 類似遺伝子はcDNAとほぼ同じ長さであり、90%の相同性を持つプロセスド型の偽似遺伝子で会った。進化のごく最近に1p31に転座したものと思われた。 本遺伝子はヒト染色体14q24.2-14q24.3にあり、擬似遺伝子は1p31に存在した。 従来、知られている染色体21番と19番以外に、最近新たに家族性アルツハイマー病の原因遺伝子座として14q24.3が報告されている。大部分の家族性アルツハイマー病は14q24.3と連鎖する。今後、本遺伝子とアルツハイマー病との関連を追及していきたい。
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