キサンチン酸化酵素はモリブドプテリン・非ヘム鉄・FADを補欠分子族とする特異な複合フラビン酵素である。酵素内電子伝達機能をもち他のより複雑な異分子間電子伝達のよいモデルとして興味がもたれている。またこの酵素は生体内ではNADを電子受容体とする脱水素酵素であるが、哺乳類由来の酵素は酵素蛋白部分の修飾により容易に酸素を電子受容体とする酸化酵素型へ変換する。本年度は酵素のX-線結晶解析の予備結果およびcDNA発現系による部位得意的変異による解析のためcDNAの改変型の構築をおこなった。またパルスラジオリシスによる分子内電子伝達速度の測定を行った。 1)ミルクキサンチン酸化酵素の結晶条件検討と予備結果 今までわれわれが結晶化に成功しているミルクキサンチン酸化酵素の結晶条件検討を行った。酵素の精製法を改良した。結晶について筑波高エネルギー研究所においてデータの収集をおこなった。また、二つの重金属置換体についてデータ収集をおこなった。 2)cDNA改変型の作成 脱水素酵素型/酸化酵素型の変換に関与するSH基および非ヘム鉄に関与するSH基に対応する塩基の改変型を作成しそれぞれをベクターに組み込む作業をおこなった。現在培養細胞で発現実験をおこなっている。 3)パルスラジオリシスによる分子内電子伝達速度の測定 サリチル酸ラジカルを用いモリブデンからフラビンに至る分子内電子伝達速度を測定した。その速度定数は510/秒であり、律速段階より著しく速いことが判明した。
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