マウス胎児10.5日cDNAライブラリーより分離した新しい遺伝子Brain Forkhead(発現場所からMesenchyme Fork Head-1、略してMFH-1と改名)は胎児期において重要な役割を果たしていることが期待される。この遺伝子の特徴は胎児期を中心に発現し、軟骨組織と腎臓皮質に一過性に発現することである。この遺伝子の機能を解明する第一歩として、まず、染色体MFH-1遺伝子のクローニングを行い、21個のクローンを得て、その遺伝子構造の解析を行った。その結果、MFH-1遺伝子はイントロンをもたない遺伝子であり全長は約4.5kbpであることが判明した。遺伝子の主な転写開始点は一つであり、翻訳開始のMetの上流584bpであった。 次に、MFH-1遺伝子のエキソン部分をネオマイシン遺伝子と置換し、5′上流3.1kbpの所にHSV-TK遺伝子を組み込んだターゲティングベクターを作製した。このベクターをES細胞に遺伝子導入し、ネオマイシン、ガンシクロビルに耐性の細胞クローンを480個得た。サザンブロット解析の結果、遺伝子標的組換えをおこしたクローンが3個得られた。現在、このES細胞クローンをマウスBlastocystに注射しキメラマウスを作製中である。 また、大腸菌内で大量に産生し生化学的に精製した組換えMFH-1蛋白をウサギに免疫して抗血清を得るのに成功した。抗体を用いて、MFH-1蛋白を解析した結果、MFH-1蛋白は核に局在する核蛋白であり60kDaと58kDaの二つの分子量をもつことが明らかにされた。
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