新しい遺伝子Brain Forkhead(発現場所からMesenchyme Fork Head-1、略してMFH-1と改名)は胎児期において重要な役割を果たしていることが期待された。そこで、胎児期と出生後のRNAをノーザンブロット解析した結果、MFH-1は胎児期に強く発現しており、出生後はほとんど発現していないことが明らかになった。さらに、RNase防護法を用いて、胎児期9.5日が最も強く発現しており、以後減少することが見いだされた。in situハイブリ法を用いて組織分布を詳細に検討した。胎児期9.5日ではsomiteに発現し、以後脊椎骨、四肢骨、頭蓋骨などの軟骨組織と腎臓皮質に強くそのmRNAが検出された。以上の結果より、新しい遺伝子は軟骨や腎臓の形成に重要な役割を担っていることが強く示唆された。 MFH-1cDNAから予測されるアミノ酸配列の特徴を見てみると、N末側にフォークヘッドドメインが存在し、C末側にはプロリン、ヒスチジンに富む転写活性化ドメインと推定される領域が認められた。また、ウサギreticulocyte lysateで作製した組換えMFH-1蛋白はHNF3蛋白の結合するDNA配列にも結合することが判明した。 この遺伝子の機能を解明する第一歩として、まず、染色体MFH-1遺伝子構造の解析を行った。その結果、MFH-1遺伝子はイントロンをもたない遺伝子であり全長は約4.5kbpであることが判明した。遺伝子の主な転写開始点は一つであり、翻訳開始のMetの上流584bpであった。 また、大腸菌内で大量に産生し生化学的に精製した組換えMFH-1蛋白をウサギに免疫して抗血清を得るのに成功した。抗体を用いて、MFH-1蛋白を解析した結果、MFH-1蛋白は核に局在する核蛋白であり60kDaと58kDaの二つの分子量をもつことが明らかにされた。
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