研究概要 |
生体内で発生する活性酸素・過酸化水素を代謝し、無毒化するヘムタンパク質酵素であるカタラーゼは、肝臓や腎臓などで強く発現しているが、細胞の癌化にともない著しく抑制されている。この発現低下の分子機構を解明する目的で、ラットカタラーゼ遺伝子を単離し、転写調節領域の構造を解析したところ、これまでに次のことが明らかになった。(1)プロモーター領域にはTATA boxがなく、数個のCCAAT boxとGC boxをもち、さらに複数の転写開始点がみられた。(2)CAT assayとin vitro transcriptionよりG rich塩基配列がカタラーゼ遺伝子の転写抑制に強く関わっていることが示された。 そこでこのG-richサイレンサーエレメントのコア配列をプローブにして、λgtll cDNAライブラリーをサウスウエスタン法によってスクリーニングしたところ、SW2クローンを得た。このクローンがコードするタンパク質(CSBPと名付けた)の構造とDNA結合の特異性、転写における機能を解析した。その結果、(1)45kDaのコード領域には、プロリンの繰り返し配列が見られるが、特徴的なDNA結合蛋白の構造はみられない。(2)G-rich二本鎖DNAに特異的に結合するが、C-rich一本鎖DNAにより強固に結合する。dG-またはdA-,dT-stretchにはほとんど結合できない。(3)CSBPを発現するベクターとG-rich配列をもつCATレポータープラスミドのコトランスフェクション実験から、CSBPが転写抑制因子であることが示唆された。(4)アルブミン遺伝子、アルドラーゼB,OTC遺伝子の上流領域にみられるG-rich配列を用いてCAT assayを行ったところ、強い転写抑制が見られた。 以上の結果から、G-richサイレンサー配列のC-stretchにCSBPが強く結合し転写が抑制されるメカニズムが示された。
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