研究概要 |
1.平成5年度までにパラインフルエンザウイルス(HPIV2)による細胞融合を抑制する活性をもつ抗HNモノクローナル抗体に対する中和抵抗性の変異ウイルス株を4つ得た。これをさらに解析した結果、当該抗体の結合部位にはHN蛋白の83番目のアスパラギンおよび91番目のリジンが関与していることが証明された。 2.パラインフルエンザウイルス3種(HPIV2,HPIV4,およびSV41)のHN蛋白およびF蛋白のcDNAクローンをそれぞれ発現ベクター(SRα)に組み込み、細胞にTransfectして細胞融合を誘導する系を確率した。この蛋白発現系を用いて解析したところ、HPIV2やSV41のHN蛋白はそれぞれHPIV2やSV41のF蛋白と同時発現したときに著明な細胞融合を誘導した。また、HPIV2のHN蛋白はSV41やHPIV4のF蛋白と同時発現したときにも比較的軽度ながらも細胞融合を誘導したが、その逆は観察されなかった。 3.上記の成績に基づいて、HPIV2とSV41のHN蛋白のキメラ蛋白を32種類作製して発現させ、さらに解析した結果、HPIV2のHN蛋白のアミノ酸37番目から94番目までの領域、および148番目から209番目の領域がF蛋白との機能的な相互作用、すなわち細胞融合誘導に関わっていること、また、同様にF蛋白のキメラを解析した結果、HPIV2のF蛋白の128番目から227番および430番目から551番目までの領域がHN蛋白との相互作用に関わっていることが判明した。 4.以上の成績より、HN,F両蛋白ともそれぞれ二つの領域が、細胞融合誘導において重要な役割を果たすことが示唆された。いずれの蛋白も一つの領域は細胞膜貫通領域を含んでおり、非常に興味深い知見であると思われる。
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