本年度は主にホスファチジン酸(PA)による好中球の活性化について検討を行なった。電気穿孔して膜透過性を高めた細胞に各種PAを加え検討した結果、次の事が明らかになった。^<1)> i)PAによる活性化はCa^<2+>非依存性であること、ii)活性化能は、PAのアシル基の短いものほど高いこと、iii)短鎖のPAではわずか数μMで十分な活性化を引き起こすこと(ジデカノイルPAのEC_<50>は3μM)、iv)至適濃度での活性化の程度は、生理的活性(例えばfMLPによる)とほぼ同じレベルであること、などである。さらに今回明かになった中で最も重要な知見は、PAによる活性化がDG非依存性であることである。この事実は、PA自身が細胞内でセカンドメッセンジャーとして機能している事を、強く示唆するものである。なお、当初の計画では、5年度は、スペルミンの阻害メカニズムを検討する予定であったが、以下の理由によってPAによる活性化の検討を先に行った。その理由は一つに、このアイデアにおける海外の研究者との競争が激しくなり速やかに実行する必要が生じたこと、もう一つは、スペルミンの阻害機構を解明する上で、活性化機構の問題は避けて通れない問題であると判断したからである。結果的にはPAによる活性化機構を世界に先駆けて発表することができた。^<1)> 今回の研究結果をもとに、今後さらに好中球内細胞伝達の本質に迫りたい。 1)Tamura et al.(1993)Arch.Biochem.Biophys.305 477-482
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