ハムスターtsBN2 cell lineは、RCC1遺伝子座に点突然変異を持ち、温度感受性の増殖表現型を示す。この変異細胞をS期に同調した後、制限温度下にシフトすると、染色体複製が未成熟のまま染色体凝縮を起こす。このことは、RCC1遺伝子が複製終了と分裂期開始のタイミングを制御している事を示唆している。そこで、染色体凝縮の機構を解明するために、ヒトRCC1タンパクと相互作用する因子の分離を試みた。まずそのために、N端の8番目から29番目のアミノ酸を欠いたRCC1cDNAをGAL4遺伝子のDNA結合領域に融合したプラスミドを構築して酵母細胞に導入し、2-hybrid法によるスクリーニングを行なった。ヒトB細胞由来のcDNAをGAL4の転写活性化領域に融合したライブラリーから2クローン、マウス胚由来のcDNAをウィルス由来の転写因子VP16に融合したライブラリーから4クローン分離したところ、前者からは、RanBP1とGAL4のコンタミネーション、後者からは、4つとも同じRanBP2がとれたことが分かった。RanBP1が、Ranを介してRCC1タンパクと結合する事、RanBP1が、RCC1によるRanからのグアニヌクレオチドの遊離反応を阻害することを試験管内の実験で明らかにした。また、細胞内でもRCC1を阻害することをtsBN2や出芽酵母のrcc1変異細胞内でヒトRanBP1を高発現させて示した。また、RanBP2は、核膜孔を構成するタンパクの一つで、RanBP1同様RCC1を阻害する事が分かった。
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