分離した2遺伝子RanBP1、RanBP2のコードするタンパク質の機能についてさらに検討した。RanBP1タンパク質を特異的に認識する抗体を調製し、細胞内局在性について間接蛍光抗体法によって調べたところ、このタンパク質はヒト由来のHeLa cell lineにおいて細胞質に存在することがわかった。昨年度、RanBP1タンパク質はRCC1によるRanのグアニンヌクレオチド交換反応を阻害することを報告したが、細胞内局在性の結果から、細胞内機能は核内タンパク質RCC1の阻害ではない可能性が高いといえる。RanBP1は、試験管内でRanのGTPase活性化タンパク質RanGAP1によるRanのGTP加水分解反応の促進をさらに増幅することが報告されており、細胞質因子RanGAP1と協調的に働く因子であることが強く示唆される。また、ヒトRanBP1は酵母相同体のnull mutationを完全に相補することから、この因子の機能の真核生物間における高い普遍性が示された。一方、RanBP2タンパク質に対する抗体を調製し、このタンパク質が核膜孔の細胞質フィラメントを構成するものの一つであることを明らかにした。さらに、核タンパク質の核内移行を観測する系を構築し、導入したRanBP2抗体が核内移行を阻害することから、RanBP2は核タンパク質の核内移行に必須の因子であることを示した。
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